10.遅刻魔先生







キーンコーンカーンコーン

学校のチャイムといえば、定番のこの鐘の音。
木ノ葉学園でも毎日授業の開始と終了、そして下校時刻には、お馴染みのメロディがスピーカーから鳴り響く。
それは今日も時間の狂いなく、今から三十分以上前に一限目の開始を告げた。




「……カカシ先生、来ないわね」
「そうだね」
「どうせまた遅刻だってばよ」


高校の授業が始まってまだ二週間ほどしか経っていないのに、このクラスの担任で現代文担当のはたけカカシ先生は、既に私達の中で遅刻魔認定されていた。
週に三回、今までで六回あった授業の内、きっちり時間通りに来た事なんてたったの一度もない。
更に毎朝のホームルームには最初の一日しか現れず(これも遅刻だった)、代わりに副担任であるヤマト先生が連絡と出欠確認をする事が既に日課になっていた。
そんなカカシ先生が授業に遅れるのも最早日常化してきて、クラスは休み時間延長モードである。


「ていうか、あの人よく首にならないね」
「ホントよねー。こうも毎日毎回遅刻って、教師としてどーなのよ?」
「いや、教師としてはダメダメだってばよ」
「でもよぉ、勉強する時間が減るなら、別にいいんじゃねーのぉ?」


飛段が私の肩に腕を回し後ろから顔を出して、話に割り込む。
と、即座にナルトとサクラがその顔目掛けて拳を突き出した。


「へぶっ」
「飛段、ナマエに触んなってばよ!!」
「ナマエに近付くんじゃないわよ!この変態!!」


先日の巨乳発言以降、彼の扱いはこんなもんである。
それでもめげずに私に絡む辺り、相当巨乳が好きらしい。
開き直り方がむしろ清々しいくらいだ。気持ち悪いけど。
気の済むまでナルトと二人がかりで灸を据えて、サクラはまるでゴミ出しでもするかのように飛段を廊下へ投げ捨てた。
そのまま帰ってくんな!と辛辣な言葉を掛けて、その怪力で教室の引き扉を勢いよく引く。




ぱしっ、


しかし引いた扉は最後まで閉まることなく、廊下から伸びた腕によって遮られた。




「やあ、おはよう諸君」
「カカシ先生!遅いってばよ!!」
「今何時だと思ってんのよ!」
「もう残り五分しかないぞ、うん!」


暢気に手を振りながら入ってきたカカシ先生に、怒濤のツッコミが飛び交う。
そんな生徒の罵声をものともせず、カカシ先生は変わらないのほほんとした声音で言い訳を述べた。


「いやー、ちょっとそこでおばあさんの道案内を…」
「「はい嘘!!」」
「校内に道に迷ったおばあさんが居るわけねーだろ、うん!」


言い訳を最後まで言わせることなく、ナルトとサクラが息の合ったキレッキレのツッコミをかまし、それにデイダラが続く。ここまでが日常のテンプレになってしまった。
そろそろどうにかしてほしい。
このままだと現代文の成績、単位はともかく試験は完全にアウトだ。
このペースで中間試験までに出題範囲が終わるとは思えない。


「先生の職務怠慢で補習とか留年とか、それだけは勘弁してくださいよ本当に」
「大丈夫、そしたらナマエは学校辞めて俺の奥さんに永久就職すればいいヨ」
「そのベタなセクハラも勘弁してください」
「先生、つまらないオッサンみたいな冗談言ってる暇あったら少しでも授業進めて」
「うわあサクラ辛辣…ナマエ、サクラが恐い慰め「殴るぞ変態教師」
「…冗談だってば…」


サクラの鉄拳が飛ぶ前に口をつぐんだカカシ先生は、渋々教壇に立ち教科書を開いた。
なんで渋々なの。それがあなたの仕事でしょうが。
勉強はあんまり好きじゃないけど、これほどまでに授業受けたいと切望したことはかつて無いと思う。
やっと授業が進む、と安堵したのも束の間、時計を見たところで私は絶望した。


「それじゃ、教科書の25ページ開い、」

キーンコーンカーンコーン










遅刻魔先生

(じゃ、授業終わりネ)
(始まってすら無いですけどね!)